
石川県能登町鵜川に拠点を置く「有限会社 日の出大敷」の五代目網元、中田洋助(なかだ ようすけ)さんは、伝統的な定置網漁を守りながら、次世代の漁業を切り拓く革新者です。1986年、能登の自然と共に育った中田さんは、地元・飯田高校を卒業後、北里大学水産学部に進学。大学では海洋資源や漁業の持続可能性について専門的に学び、海と生きる道を自らの使命として見定めました。
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大学卒業後、中田さんは定置網製造で国内トップシェアを誇る金沢の製網会社「ホクモウ」に4年間勤務し、漁網の構造や扱いに関する深い知識と技術を習得。その後、能登にUターンし、家業である「日の出大敷」の舵取り役として本格的に漁業の現場に立ちます。

中田さんが率いる定置網漁は、魚の動きを読み、自然の摂理に寄り添う「待つ漁法」です。この漁法は環境負荷が少なく、持続可能な資源管理を可能にするものとして注目されています。彼は船上処理や流通の効率化にも力を注ぎ、水揚げされた魚を新鮮なまま全国の食卓へと届ける仕組みを整備。市場競争においても、能登の魚が持つ真の価値を発信し続けています。

さらに中田さんは、漁業の未来を担う人材育成にも情熱を注ぎます。地域の小学校を訪れては、子どもたちに海と漁師の仕事の魅力を語り、地元の自然に誇りを持てるよう働きかけています。その姿勢は、地域の希望そのものであり、子どもたちの心に深く根を下ろしています。
また、酒蔵「数馬酒造」の数馬嘉一郎さんと連携し、奥能登の資源を活かした流通プロジェクト「奥能登食材流通機構」を立ち上げました。最新鋭の冷凍・加工技術を導入することで、季節の旬を逃さず全国に届ける新たな仕組みを築いています。

中田さんの挑戦は、能登の里山里海に息づく自然と共にあります。豊かな海と山、人の営み、そして受け継がれる知恵と技術。そのすべてを未来へとつなぐ架け橋として、彼は今も、里海の恵みと真摯に向き合い、静かに、そして力強く生きています。

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