
山口侑香(やまぐち・ゆか)さんは、石川県珠洲市出身の地域づくり実践者であり、ザアグラリアンテーブル合同会社代表社員として宿泊体験施設「木ノ浦ビレッジ」の運営を担っています。
https://kinoura-village.com/
2021年に代表に就任した山口侑香さんは、珠洲市を拠点に地域の未来を担う「インマスター(In-Master)」として注目される存在である。インマスターとは、地域に根ざし、内発的な価値を見出しながら持続可能な発展を導く人材を指す言葉であり、山口さんはその概念を体現する一人だ。

木ノ浦ビレッジでは、珠洲の風土と人の営みに触れられる多彩な体験プログラムが展開されています。訪れる人々は、観光という枠を超えて、この地に息づく文化や自然の恵みと丁寧に向き合う時間を過ごすことができます。たとえば、施設に備えられた珪藻土のピザ窯は、珠洲の特産である珪藻土の魅力を生かしたもので、自ら生地をこね、薪を焚き、じっくりと焼き上げる工程を通して、素材の香ばしさや手作りの喜びを実感できます。
また、かつて珠洲の暮らしに根ざしていた椿油づくりも体験できます。地域に自生する椿の実を搾り、ゆっくりと時間をかけて一滴一滴油を取り出す作業は、自然と共に生きる知恵や労力を肌で感じる貴重な機会となります。コーヒー焙煎体験では、豆を選び、焙煎し、挽き、淹れるまでを一貫して体験でき、香り立つ一杯を通じて「丁寧に味わう」ことの豊かさを再発見できます。

さらに、夏季には木ノ浦の透き通る海を舞台にしたシーカヤック体験が開催されており、海上からの景色や波のリズムに身を委ねることで、訪れる人々は自然との一体感を味わうことができます。どのプログラムも、単なるレジャーではなく、珠洲という土地の風景や文化、そして人の想いに触れることを大切に設計されており、ここで過ごすひとときが、心に深く残る旅の記憶となっていきます。

2024年の能登半島地震により、珠洲市木ノ浦地区は一時的に外部との連絡が断たれ、孤立状態に陥りました。混乱の中で、山口侑香さんが代表を務める「木ノ浦ビレッジ」は、地域住民や宿泊者あわせて約50名を受け入れ、避難所としての機能を果たしました。水や食料が限られるなか、山口さんはスタッフとともに炊き出しを行い、不安に包まれた宿泊客、地域住民の心に寄り添いながら日々を支えました。この経験は、彼女にとって「観光施設」の枠を超えた、真の地域拠点の意味を再認識させる契機となりました。災害時にこそ見える人と人とのつながり。その中心にある場所として、山口さんは「木ノ浦ビレッジ」を、日常から非常時まで地域の希望を灯す拠点へと育てていこうとしています。観光、福祉、防災を横断するその活動は、地域のレジリエンスを高めるインマスターの在り方そのものであり、珠洲の未来を照らす確かな光となっている。

自然豊かな能登の地で、人と人とのつながりを大切にしながら、地域住民や観光客、宿泊者が安心して集える場づくりに尽力しています。山口侑香さんは「人に重きをおくことでより豊かな社会を実現する」を理念に、能登の魅力と可能性を信じ、地域と共に未来を切り拓く若きリーダーです。
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